2013年12月29日
鼻セレブはなぜ売れるのか
こんにちは。
コトダマーケティングの市毛です。
「鼻セレブ」という商品をご存知でしょうか?
スーパーやドラッグストアで5箱200円代と言う値段で安売り競争が
繰り広げられているティッシュペーパーのなかで、値崩れすることなく
1箱230円前後で売られている高級ティッシュです。
私も使ったことがありますが、保湿機能が付加されているそうで、
しっとりとやわらかい。
何度使っても鼻が赤くなったりしないので、鼻風邪のときや花粉症の
時期などは、多少高くても欲しいと思う気持ちはよくわかります。
ところが、発売当初は話題にはなったようですが、売れる商品には
なりませんでした。
今との大きな違いがひとつありました。
ネーミングです。
当時の商品名は「ネピアモイスチャーティッシュ」。
モイスチャーの意味は、水分や湿気ですから、特徴をずばり表現していますし、
化粧品等でよく使われる言葉ですから、おしゃれな感じもあって
決して悪いネーミングだとは思いません。
しかし、その思いが消費者に届くことはなかったわけです。
「鼻セレブ」という奇抜な名前で、
ブランドを刷新するのはその8年後。
とたんに人気商品として、市場を席巻しはじめます。
ネーミングの重要性がよくわかる逸話ですよね。
では、なぜ「ネピアモイスチャーティッシュ」では売れずに「鼻セレブ」で
売れたのでしょうか。
普通に考えて、この2つが案として出されたときに「鼻セレブ」を
選ぶという人は、あまりいないように思います。
なんというか、ダサイ。
「ネピアモイスチャーティッシュ」のかっこいい響きと比べれば、
洗練されてませんし、違和感さえ感じます。
マーケティングの専門家は、こんなことを言うかもしれません。
『「鼻」という言葉があることで、鼻にやさしいティッシュだと言う、
使用シーンでのメリットがわかる。また、「セレブ」と言う当時の
流行語を使うことで、注目を集めることに成功した』と。
でも、私はもっと重要なのは「違和感」そのものだったのではないだろうかと
思っています。
ティッシュペーパーは、競合商品がたくさんあり、機能や質は
どの会社のものもほぼ同じで、消費者は価格の安い商品を選ぶ傾向に
ありました。
いわゆる成熟マーケットの商品です。
ですから、いかに他製品と差別化するかということがマーケティングの
鍵を握ります。
目立たなければいけないわけです。
競合商品の多い成熟マーケットでは、どこかで聞いたようなネーミングでは、
どんなにかっこよくても、どんなにおしゃれでも、それだけでは埋もれてしまうだけです。
ですから「違和感」がモノを言うわけです。
ダサかろうが、洗練されてなかろうが、「なにコレ?」と消費者に
目を止めてもらうことが、何よりも重要だったわけです。
商品の品質は、もともと「画期的にいい」わけですから、一度使ってもらえば
その良さがわかります。
あとは、ユニークなネーミングをフックにクチコミでどんどん広がっていきます。
靴下の「通勤快足」も同じですね。
靴下も5足1000円で安売りされている成熟マーケットですから、
消費者の目を向かせるネーミングが必要だったのです。
そしてもちろん商品の品質も良かったから、人気商品になったわけです。
あなたの扱っている商品やサービスが成熟マーケットであるならば、
差別化戦略が重要であるならば、ネーミングやコピーに、違和感のある
耳になじみにくい言葉をあえて使ってみることをおすすめします。
「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」なんてネーミングも、そういう意味では
とても違和感のある、いい例なのではないでしょうか。
ネーミングやキャッチコピーは、ノウハウ本などを見ると、わかりやすさや
顧客の視点に立つことなど、いろいろなコツが書いてありますが、
その手法は実は、競合やマーケットの状況によって変わります。
同じ成熟マーケットでも、ビールなどの嗜好品は、逆に違和感が過ぎると
敬遠されてしまいます。
消費者はビールらしいビールを求めており、変わったビールが飲みたい
わけではないんですね。
ですから、売上がネーミングに左右されることはほぼありません。
それよりは冷え冷え感だったり、コクやキレの味わいイメージだったり、
そうした表現に気を遣った方が、売上に直結します。
そしてもうひとつ大事なのが「ブランドイメージ」ですよね。
その業界やマーケットのなかで、どんな立ち位置にいるのかということを
考えなくてはいけません。
以前のメルマガで書いた「ニッチ」です。
おさらいしますと、ニッチマーケティングのニッチとは、すき間のことではなく、
壁龕(へきがん/像や装飾品などを飾るために壁に設けた窪み)のことです。
つまり、自分たちの商品やサービスが、壁のどの場所にある壁龕なのかを
知っておくことが大切だというわけです。
みんなが知っている手に取りやすい場所にあるのか、
なかなか手の届かない高い場所にあるのか、
見つけにくい下の方にあるのか、
それによって取るべき戦略は変わってくるわけです。
それだけではありません。
ほかの壁龕にどんなものが置いてあり、その壁の前を通るのはどんな人が
多いのか、どのくらいの人が通るのかによっても、戦略は変わります。
ブランドサルベージの主宰、松尾大将はよく
「お客さまの声を活用しろ」と言いますよね。
それは、お客さまがあなたの商品やサービスをどう見ているのか、
どう使っているのかといったことの中に、ブランドイメージやマーケットの
状況を知るヒントがたくさんあるからです。
いや、お客様の声の中にこそあるのだ
と言った方がいいかもしれません。
ネーミングやキャッチコピーなどを考えるときは、頭で考える前に、
過去のアンケートなどを読み返したり、実際にお客様にヒアリングを
してみたりしてはいかがでしょう。
どんな言葉も、その思いがお客様に届かなければ、お客様の心は動きません。
心が動かなければ、商品を買ってくれることはありません。
お客様を知り、理解すること、コトダマーケティングはそこから始まります。
市毛秀穗
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Posted by しるばーうるふ at
15:04
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